向き合い、手放し、そして委ねる

先週から仕事で人気の海辺の街ブライトンに滞在しています。5月だというのに雨が降り、さむ~い日が続いています。さて、今週はロンドンカウンセリングコース(正式名:Integrated Counselling Diploma Course)の卒業生の癒しのジャーニーをシェアさせて頂きたいと思います。

このコースの特徴はたくさんあるのですが、その中の一つはやはり、“自分を癒して、初めて人を癒せる”という理念です。もちろん、自分のすべてを癒すという意味ではありませんが、例えば、自分が夫に自分の気がついていない心の傷を投影し、怒りを握り締めていたとしたら、他者の夫婦関係を癒すのは、かなり無理がありますね。

また、今回シェアをしてくださる文章をお読み頂いても、心の傷が癒されるだけではなく、体験の深いところから来る真の知恵を学び取り、魂の成長にもなっていることがよくお分かりいただけるかと思います。

コースは実は旅の始まりです。そして、それぞれが取り組んだ癒しのジャーニーを読む度に(課題のレポート)、ほんとうに心の底から畏敬の念があふれてきます。そして、これは多くの人の役に立つのではないか、シェアをできたらなぁ・・とずっと思っていました。

ということで、今後コース卒業生の癒しのジャーニーをときどきシェアさせて頂こうと思っています。今回は、その第一弾です。(本コースは、イギリスのホリスティック・ヒーリング・カレッジとタイアップしたコースです。)

※※※※「私の癒しのジャーニー:身体問題を通じて自分と向き合う」by野波美穂※※※※

私が自分の癒しの旅を考えた時、「身体問題を通じて自分と向き合う」というパターンがあったように思います。「自分」というのは過去の経験も含まれていますが、私の場合、多くは自分のエゴでした。

最初に私のエゴをがつんと揺さぶったのは、ホリスティック・ヒーリング・カレッジで生徒同士がペアになってコーチングの練習をしていた時のこと。相手に「あなたは自分の問題に真剣に向き合っているように見えない」と言われたのです。予想外の言葉に、とてもショックを受けました。

私が真剣に向き合っていなかった問題は子宮筋腫。それ以前に診断されており、当時も徐々に大きくなってきているのを感じてはいました。でも私のエゴは「筋腫は良性腫瘍だしね」「閉経したら縮小するし」「筋腫を持っている人は多いから」と、気に留めないふりをしながら、筋腫に向き合うのを巧みに避けていたのです。

言われた瞬間、ショックと共に出てきたのは彼女に対する怒りでした。でもこれは一種の防衛反応であり、ブラックボックスを開けることへの私の恐れが投影されたのだとインテグレイティッド心理学から学んでいたので、怒りは感じるままに流し、私は自分の筋腫と向き合うことをその時に決意しました。

まずはフォーカシングで筋腫との対話を始めました。するとまあ出るわ出るわ、両親に自分の選択を否定され非難された記憶、上司から心無い言葉を投げかけられた記憶(いずれも私から見て)などが次から次へと蘇ってきました。押し殺していた悲しみや屈辱感と一緒に、頑張ってきた自分に対する愛おしい気持ちと辛い感情を受け止めてくれていた筋腫への感謝で涙が止まらなかったのを覚えています。そして解放が終わった後は、とてもすがすがしく、生まれ変わったような気分でした。

これに気を良くした私は、その後筋腫に対してフラワーレメディ、スピリチュアルヒーリング、レイキ、クリスタルヒーリングなど、思いつく限りの自然療法、ヒーリングを試みました。フォーカシングがうまくいった以上、他の療法を組み合わせて癒しを継続していれば筋腫が小さくなって完治するに違いない、と思いながら。が、期待に反して腫瘍は縮小せず、むしろ増大を続けて一年後には手術が避けられない状態に。この時が二度目の「エゴの危機」でした。

この時の葛藤は、最初の時とは比べものにならないほど激しいものでした。「私はこんなに頑張ったのにどうして治らないんだ!」という怒り、「所詮、私ができることなんてない」という無力感、「いくら私が努力しても無駄なんだ」という劣等感や敗北感、自己憐憫などが次々に湧き上がり、私はその嵐のような感情と思考に呑み込まれてどうにかなってしまいそうでした。どうやって抜け出せば良いかも判らず、絶望と苦しみだけに浸っていたのを覚えています。

そんな闇の底とでもいうような状態が一週間ほど続き、とうとう私のエゴは白旗を上げました。何もかもをコントロールしようとして失敗したエゴが敗北を認め、事態を流れに任せることを受け入れたのです。すると不思議なことに全てが変わってきました。私の心は初め幾何かの自棄があったものの、それがすぐに穏やかで安定した状態に。流れに任せているのにどこかに確固とした安心感があり、婦人科の先生に「筋腫だけ取り出すのは無理。子宮全摘は避けられない」と言われた時にも、何故か大丈夫という気持ちで落ち着いていられました。そして不思議なことに、手術を視野に入れた途端、ほんの短期間顔を合わせただけの人がわざわざ電話をくれて子宮筋腫治療に有益な情報をくれる、といったようなことが起こり、周囲が私をサポートする方向に動き始めたような感じでした。

私のエゴはその後もホルモン療法の間に時々顔を覗かせましたが、その度に敗れ去り、私は半年後に手術を受けました。直径が約20センチあった巨大な筋腫はホルモン療法で主治医が驚くほどに縮小していたので(15センチまで)手術は短時間で筋腫核出術のみで終了、幸いにも子宮は温存されました。

この経験を通じて私が得たのは、辛い過去の解放と物事を流れに任せることの二つです。特に後者は私にとって大きな進展でした。思えば、自然療法を試みていた時の私は「絶対手術を受けないで治す」という執着で凝り固まっていたような気がします。それが自然治癒のエネルギーの流れを妨げていたのでしょう。今は、あの時の経験から、「全て自分が思うようにしなくてはならない」、「将来はこうならなくてはいけない」、という考えが無理だと判っているので毎日がとても楽です。もちろん「こうなって欲しい」とか「こうしたい」という希望はありますが、それに対して日々できること、やりたいことをやりつつ、後は大きな流れに身を任せて宇宙のサポートを待つ、という心地よさを感じている今日この頃です。

コース二期生、野波美穂:メタメディスンヘルスコーチ・トレーナー、医学博士、他。現代医学、セラピー、スピリチュアルな観点を統合させたセッションを行う。詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。→“Dr.美穂のセラピールーム” (スカイプセッションで日本からでも受けられます。)

 

向き合い、手放し、そして委ねる」への6件のフィードバック

  1. あゆかさん、今回もシェアをありがとうございます。
    久しぶりにコメントします。
    赤ちゃんのことで悩んでいた時、こちらにコメントしてみなさんの温かいコメントをいただき、ゆっくりと前に進むことができました。
    少し落ち着いてきたかなという頃、実家で認知症の母を介護していた父も要介護の状態ということが分かりました。
    今月に入り母の容体が悪くなり入院し、父も認知症のため不安が重なり情緒不安定で、通いで実家に通っている自分の感情が揺さぶられる日々が続いています。
    持病である過敏性腸症候群が一時期落ち着いていたのですが、ぶり返してきました。
    今回の野波さんのジャーニーを拝読し、こころがじわりとするのを感じました。
    丁度いいタイミングで読めたと思います。
    本当にいろんな気持ち、自分の弱さ、汚い思い、思いこみでグルグルし、押し寄せる波(感情)に疲れています。
    次から次へと決断をしないといけないので苦しくなっています。
    でも・・・それでも周りの人のサポート、気遣い、小さな優しさに心が震えることもあり、状況はきついけれど、しあわせを感じることもあります。
    事態に流れを任せる=そうしなければ、楽にならない。何とかしなきゃ!、そう苦しんでるのかもしれません。
    繰り返しになりますが、本当にいいタイミングで読めたことがウレシイです。
    いいキッカケになって、じわりじわりと自分の中でこだわりや思いこみが溶けていくと思います。
    ありがとうございます。

  2. あゆかさん、いつも温かいお話をありがとうございます。
    前回に引き続き、今回の内容も、すごく学びがありました。

    私は現在、赤ちゃんを授かることを望んでいます。
    私は身体的な理由から、医師から体外受精を勧められています。
    体外受精の知識があまりなく、それ自体への恐怖もあるのですが、
    「そこまでして赤ちゃんがほしいの?」という自分がいます。
    そこで、「私は本心から赤ちゃんを望んでいないの?」という自分もいて、
    ハートの声がどんどん聞こえなくなっていきます。

    でも、それ以上に私が強く感じているのは、
    「自分の体は自分でなんとかしなければならない」
    「自分の体をコントロールできない自分が悪い」
    と自分を責めていることです。
    アファメーション、体との対話、生活改善などで
    克服して健康な体(自然妊娠など)になった人もいるのに、
    私にはできていない、
    私は意志が弱い、私には力がない、私はダメだ、私は宇宙に見放されている、
    私は神様に親になることを認められていない、私は神様に認められていない
    ・・・書き出すともうきりがありません。
    自分に対する否定的な思いがたくさん出てきました。

    私が赤ちゃんを思い浮かべた時、感じたのは
    全身全霊で愛することからのとめどなく溢れ出る愛、
    心から愛おしいと思う気持ち、
    優しい気持ち、幸せ、癒し、安心感・・・でした。
    そこでふと、
    「私は今まで自分を愛していなかった」ことに気づきました。
    赤ちゃんに対して思う気持ちは
    今、私が必要としている思いだ、それを満たしてあげよう、
    自分で自分を愛してあげよう、今はそう思って毎日を過ごしています。
    私が私の母親になったつもりで、小さい頃にやりたかったことをやらせてあげ、
    周囲の人に言ってほしかったことを言ってあげています。
    やがてお母さんになった時、子どもにそう接してあげられるように!
    自分を愛することの本当の意味がわかってきて、うれしいです。

    長文になってしまってすいません。
    私の場合、たまたま「赤ちゃん」を通しての経験になりました。
    辛い時もありますが、一つ一つの経験が本当の自分を見つけて
    楽になっていける、幸せになっていくありがたい出来事なんだな~と
    感じています。
    この旅を心から楽しもうと思います。
    あゆかさん、これからもブログ楽しみにしています。
    ありがとうございます。

  3. あゆかさん、こんにちは!
    いつもブログ拝読しています。
    今回のシェアすごくよかったです。

    実際にロンドンコースを修了した人がどんな過程で自分を癒やして行ったか
    知れるのは自分の癒やしにとっても参考になります。
    また機会があればこういうシェアをドンドン増やしていってほしいです!

  4. あゆかさん、

    参考になる記事をいつもありがとうございます。
    そして、先日は私のコメントを取り上げてくださってありがとうございました。

    子育てしている中で生じる感情についてちょっとお聞きしたく、再びコメントさせていただきます。

    私は赤ちゃんの泣き声(特に、お腹もいっぱい、おむつもキレイ、室温も快適…という状況で泣かれる事)が嫌で嫌でたまりません。赤ちゃんは泣くのが仕事とよく言われますが、私にとっては泣き声を聞くのは苦痛でしかありません。

    なぜ苦痛に思うのかを探ろうとしてもうまくできず、やはりセラピストさんのお力を借りた方がよいかと思っています。しかし、赤ちゃんに対して抱く感情も、自分の思考が投影されているのでしょうか。また、他人のお子さんではなく、自分の子どもの泣き声だから反応してしまうのかな?と思ったりします。
    我が子はとても愛おしいのに、泣き声に対して嫌悪感を抱いてしまうこの矛盾のなかでもがいています。

    まとまりが無いうえに、分かりづらい文章ですみません。

  5. あゆかさん、EFTの質問です。

    仕事の人間関係に悩まされています。

    同僚の無視したり、はぁ?というような応対、
    裏でコソコソと自分に
    仕事が回ってこないようにする
    など毎日、かなり頭にきます。

    そこで、EFTをします。
    感覚、感情に、もちろんフォーカスして流すんですが、

    どうしても、許せない、むかつく、傷つくなど
    「思い」が残り、
    仕事中でゆっくりEFTができないこともあり、

    なかなかすっきりせず、
    一日中ストレスまみれで
    疲れきっています。

    反応する私の心、そういう態度を取られることについてセッションで見ていくことが
    必要と理解しています。

    ただ仕事中、どうにも悔しい、悲しい、辛い思いを和らげて、
    対処したい時はどうしたらいいのかと苦しいです。

    EFT自体 、感情にアクセスする方法で
    思いに対する手法ではないと思うのですが
    私自身がセッションなど受けて癒していって気にならなくなるまでは
    しかたがないのでしょうか?

  6. とても素晴らしい経験のシェアありがとうございます。

    >言われた瞬間、ショックと共に出てきたのは彼女に対する怒りでした。
    >でもこれは一種の防衛反応であり、ブラックボックスを開けることへの
    >私の恐れが投影されたのだとインテグレイティッド心理学から学んでいたので、
    >怒りは感じるままに流し、私は自分の筋腫と向き合うことをその時に決意しました。

    指摘してくれた人はありがたい存在ですね。

    指摘してくれなかったら気づかなかったかもしれません(笑)。

    >こうなって欲しい」とか「こうしたい」という希望はありますが、それに対して
    >日々できること、やりたいことをやりつつ、後は大きな流れに身を任せて
    >宇宙のサポートを待つ、という心地よさを感じている今日この頃です。

    「人事を尽くして天命を待つ」

    に近いものがありますね。

    今をありのままに生きれればいい。

    そう感じます。

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